オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ぞっとしない話

今週のお題「ゾッとした話」 「それは、ぞっとしないね」 そんな台詞が出てきたのは、なんの小説だったかは忘れてしまったが、いつまでも心のどこかに引っかかっていた。いつか、日常の会話の中で使ってやろう密かに考えたのは、高校生ぐらいの頃だったと思…

男性用日傘の様な仕事っぷりを目指す

今週のお題「最近買った便利なもの」とうとう買ってしまったのは男性用日傘だった。ギラギラを通り越して殺意を感じる日差し、紫陽花の葉さえぐったりする夏の仕打ちに耐えきれずに手にしてしまった。男性用日傘は何が違うかというと、とにかく大きい。小さ…

読まない方がいい本のススメ

今週のお題「読みたい本」広島の原爆被害を描いた漫画「はだしのゲン」が2023年新年度から、広島市内の小学校で使う平和教育教材を見直し、使用しない方針と報じられた。 数十年前の子供にとっても、はだしのゲンは腫れ物に触る様な扱いをされていたと記憶し…

無人島に持っていく4分33秒

今週のお題「わたしのプレイリスト」「4分33秒」という楽曲がある。アメリカの作曲家ジョン・ケージが作曲し、1952年に初演された「3楽章」から成る楽曲である。全楽章が休みとなっていて、無音の状態が続いた後、演奏終了となる。放送事故か、一休さんのト…

日和見菌が矜持を持つと社会は変わると信じたい

私達は、社会という身体に棲みついている腸内細菌の様なものだと思う。一人ひとりは驚く程に無力だ。しかし集団で宿主に信号を送り、宿主の食欲をコントロールしたり、宿主の免疫を調整し発癌を抑えたりすることによって、宿主が健やかなる様に、結果的に自…

小曽根真さんに教わった、諦めるということ

今週のお題「変わった」久しぶりに、小曽根真さんのピアノが聴こえて来ました。あの、個性的で美しいリズムと和音。一小節聴いただけで小曽根さんだ!とわかるあの音色はどうなっているのだろう?しばし、うっとりと余韻を楽しんでいる自分に気がつきました…

ばあちゃんと桜

今週のお題「お花見」桜が咲きはじめると、何やら華やいだ気分になる。卒業も入学も、職場移動も何もない、窓ぎわ身分の中年にも、春は優しくしてくれる。まるで、ナンバーワンホステスが末席のしょぼくれた客にも笑顔をくれる様に、桜は観る人全てに、美し…

春のうららの中年の危機

退職していく人、部署移動で遠くに行く人、転職していく人。去っていく人。春はいつだって、なんだか寂しい。若い頃は寂しさに打ちのめされそうになったものだが、年の功で感傷的な寂しさは受け流せる様になった。大人は、旅立ちや卒業や、花が散るぐらいで…

ストイックなスーパースターが意味するもの

今週のお題「投げたいもの・打ちたいもの」大谷翔平さんや藤井聡太さんの偉業は、フィクションを超えていると巷間言われています。本当に、こんな物語は、アニメでも小説でも、プロットの時点で提出した即日に却下されるでしょう。現実味がない、とかなんと…

桜の森の美しさにぞっとする

満開の桜の森の下に歩きこむと、あまりの美しさにぞっとする。特別に人がいない満開の桜の下では、背筋が凍る思いがする。あれはいったい何なのだろうか。 桜の美しさの「ぞっとする感じ」を物語に移し替えたものがその物語なのか、物語を読んでしまったから…

詰めは甘くても脇は締めて、それが甘い人の生きる道

今週のお題「あまい」詰めが甘い、脇が甘い、甘い親、甘いお菓子、甘い言葉。これらの反対語を考えてみると、面白い事に気がつきました。用意周到である、脇を締める、厳しい親、辛いお菓子、厳しい言葉。「甘い」の反対語なのに、全部違うのです。なんで?…

西村賢太の私小説、エゴンシーレの自画像

特別お題「今だから話せること」自分の胸の中だけにしまっておこうと決めていた事の一つや二つ、誰にでもあるのでしょう。時が過ぎ、甘酸っぱい若さが蒸発した頃にふと、それほど大した事ではなかったと思える様になる。そうなるまでにはどうしたって歳を重…

天寿は全うしなければ

高齢者の集団自決なんて発想が、常軌を逸していると思わない人がいる事に、驚いた。 ヒトはいつか死ぬ。それでも不老長寿は人類の見果てぬ夢だったし、人は他人の長寿を寿いできたのではなかったのだろうか。いつから長寿が社会悪になったのだ? 老化する事…

リチャード3世のブラッケンベリーにならない為に

今週のお題「かける」書き出すより、書き終わる方が難しい。 いつだったか、空中遊泳が出来ると豪語する人が、あれはね、浮いた後に降りてくるのが難しいんだよ、とか言っていたとかいなかったとか。捻くれ者の私は、だったら一生浮いておけ、と、読者の身分…

鬼には、まめまめしく

今週のお題「マメ」 子供の頃、私は大変な事をやらかしたらしい。幼すぎて覚えてはいないが、節分の豆を鼻から食べようとしたらしかった。母は、ふーんしなさいと、幼な子を励まし出させようとしたが上手くいかなかった。困り果てた母は私を病院へ連れて行っ…

邯鄲の枕 かんたんな冒険

能に、邯鄲という演目がある。 その本歌取り(もどき)がしてみたくなった事がありました。かんたんな冒険 私は、幼い頃に古本屋に里子に出された。 母の顔は覚えていない。 古本屋を、夫と二人で営んでいた継母は、顔も体も丸くて、指も赤ちゃんの様にふく…