オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

男性用日傘の様な仕事っぷりを目指す

今週のお題「最近買った便利なもの」とうとう買ってしまったのは男性用日傘だった。ギラギラを通り越して殺意を感じる日差し、紫陽花の葉さえぐったりする夏の仕打ちに耐えきれずに手にしてしまった。男性用日傘は何が違うかというと、とにかく大きい。小さな日傘をちょこんとさすのは優雅なマダム仕草だと、誰かが言ったわけではないのだけれど、そう思い込んでしまっていると恥ずかしくてできないのだ。で、男性用日傘だ。雨傘を、暑さに負けて仕方なくさしている風(と自分に言い聞かせているところが中年の悲哀だな)に、大手を振って歩けるのだ。

 安心快適便利を追求する時、どこからともなく後ろめたさがやってくる。便利さと引き換えに何を差し出せば赦されるのだろうかと不安になる。「フォースタス博士」の様に、悪魔が取り立てにやってくるのではないかと恐ろしくなる。「フォースタス博士」では、悪魔であるメフィストフェレスが、フォースタス博士に近づき、ある提案をする。フォースタス博士に、これから24年にわたって絶対的な能力と際限のない悦楽を約束する。そのかわりに、期限がきたらメフィストフェレスに魂を渡さなければならない。期限が来て、フォースタス博士は絶望しながら悪魔に連れ去られる。なんとも怖くて暗い物語だ。

快適便利な物をちょっと買っただけで何を大袈裟な。けれど、何も明け渡さずに、何かを得ることは出来ないという事は恐らく真実だ。そんな都合のいい事を望んでいると、「買わず女房」の様に、化け物に捕まってしまう。「食わず女房」とは日本昔話のひとつで、ごはんを全く食べずによく働くという嫁っこをもらったケチな男が、その女房が実は鬼で、頭のてっぺんに大きな口があり、男が留守にしている間にその口から大量のごはんを食べていたことがわかってしまう。という、いいとこ取りをしようとする浅ましさを諌める物語だ。

 何かを手に入れて、その都度何かを手放して、浅ましくない生き方をしたいと思う。自分が手放すものが、何か社会にとって良きものでありますように。今日も、とつとつと、仕事しよ。