オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

無人島に持っていく4分33秒

今週のお題「わたしのプレイリスト」4分33秒」という楽曲がある。アメリカの作曲家ジョン・ケージが作曲し、1952年に初演された「3楽章」から成る楽曲である。全楽章が休みとなっていて、無音の状態が続いた後、演奏終了となる。放送事故か、一休さんのトンチか、何のことか分からない楽曲なのである。

 先日、坂本龍一さんがテレビに出てらして、この楽曲について言及されていた。もちろん再放送なのだがその時、坂本さんは、全くの無音というのはあり得なくて、テレビを観ている方にとっては生活音が聞こえるだろうし、世界は色々な音に溢れているので、外の鳥の声が聞こえるかもしれないし、各々が聞こえる音が違う所が面白い、と仰っていた。

 私には、ショパンエチュードが聞こえて来た。それは、その映像の演奏者がピアニストだったから。演奏者が坂本龍一さんなら、ラストエンペラーが聞こえたと思うし、体格のいいバイオリニストなら、エルガーの威風堂々あたりが聞こえたかもしれない。つまり、何のことはない、幻聴なのだ。つまり、あの曲は聴衆それぞれが幻聴を楽しむ楽曲なのではないかと思うのです。

 無人島に持って行くCDを一枚だけ選んで下さいと言われて、ヒットチャートのリストを持って行く、それさえあれば全曲思い出せるから、自分で脳内再生して楽しめるから。と答えたのはどなただったか忘れてしまったけれど、そうすると幻聴を楽しむ派は、4分33秒の楽譜があればいいという事になる。その楽譜さえあれば、ありとあらゆる音楽を楽しむ事ができるから。いっそ、楽譜が読めなくたって構わない。素晴らしい事に、TACET(休止)としか書いてないのだ。