オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

家に帰りたい、という奇習

今週のお題「マイルーティン」漫画家のヤマザキマリさんが、ご自身の事を「二ヶ月と同じ所に留まれない移動系体質の人間」と書いていた。私は、いつも同じ場所で眠りたいし、旅行に行っても数日もすれは帰りたくて仕方ない、というマイホーム好き人間だ。とはいえ、こだわりのある家に住んでいるという訳ではなく、どちらかというと、そのうちパイレーツオブカリビアンに出てくる幽霊船の船員の様に、家に同化して溶けてしまうのではないかと時々怖くなる様なタイプである。
 映画ノマドランドは、車中泊を続けるという現代の遊牧民の姿が描かれていた。自由とは過酷なんだよ、それでも、自由っていいだろ。と言われた気がした。過酷な自由を生きるって、やはり遠い民族の奇習としか思えなかった。
 流石に20代の頃は海外移住なんかに憧れたりもするが、30才を超えると転職も引っ越しも、相当な覚悟がないと出来なくなる。40才を超える頃には離婚して生活が変化する事が怖くて夫婦仲が悪くても何となく過ごし、50才を超える頃には、デジタルの使い方を後輩や部下に教えて貰う事に躊躇がなくなる(新しい事を知らない、馴染めないでいる自分に恥じらいがなくなる)、そして60才を超えてふと気がつくと、20年以上も毎日全く同じメニューの朝食を食べている。その後、運が良ければ70才を疾病なしで迎え、ネトウヨ紙一重の郷土愛を募らせて、我が町バンザイならまだしも愛国心とか言い出すんじゃないかと自分でも薄ら寒くなる。
とかいうのが、おそらく自宅愛系の人間の奇習なのだろう。どっちがいいとか悪いとかではなく、ただ違いを面白がってみようと思う。
 そういえば、職を転々としている人には何人かお会いした事がある。彼らはしばし一緒に働いて、ふいと居なくなるので、その後の彼らがどうしているのか知らない。今度そういう人が現れたら、彼らとの人生観の違いを楽しもうと思う。毎日同じ場所で目覚めて、同じ時間に出勤して同じ仕事をして、帰って同じ布団で眠る事に、飽きてしまうのだろうか? 私にとっては毎日が同じなのが、とても居心地がいいのだけれど。