オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

あの日の選択も、私をここへ連れて来る

今週のお題「人生変わった瞬間」あの時選ばなかった方の現実が、どこに繋がっていたのか、考えれば考えるほど人生は不思議なものです。そもそも人生は選択の連続で、それを知っていてなお、心穏やかに暮らしている事が、実は物凄い選択なのかもしれません。
 小学生の時に、父親の転勤に家族で移住しそうになった事がありました。というのは、何となく受験した中学校に合格し、その学校に進学するのかと思っていたある日、父が転勤になったから引っ越しだよと言われ、少し残念に思いながらも合格した学校には進学しない事になったのでした。子どもとは、単純なものですぐに引っ越し先での生活を夢見はじめていたら、ある日、家に帰ると真新しい体操服が置いてあったのでした。やっぱり合格した学校に行くんだよ、手続きしてきたよと母に言われ、どういう経緯でそうなったのかは子どもには理解出来ませんてしたが、とにかく移住はなくなり、父は単身赴任する事になりました。
 あの時、移住していたらどうなっていたのだろうと、考えてみました。進学先が違う、出会う人も違う。そうすると、職業選択も変わってしまった様に思います。もしかしたら医学部ではなく文学部を卒業して、小説家を目指してしたかもしれないし、政治学科に進学して今頃は議員になっているかも(それはないか)、なんて妄想するのは楽しいけれど、どんな職業人になっていたにせよ、あたまの中身は大して変わらないのではないかとも思うのです。つまり、村上春樹の小説が好きで、でも阿部工房も捨てがたい。そして内田樹先生や、宮台先生のお説教本も、齧りつくように読んでしまう、活字中毒文体フェチで、猫と暮らしている。それでもっておしゃべりも大好きで、周囲は私のお喋りに本当は辟易している面倒くさい人に、結局はなっている。どんな選択をしても、最終的にこうなっていたのかと考えると、思い詰める事なく心穏やかに今日の選択ができるのでした。
 Eテレの番組0655で流れるおはようソングに、今日の選択という歌があります。又吉直樹さんが朝起きて、どっちにしよう?と悩みながら朝ごはんを選択し、洋服を選択し、交通手段を選択してお出かけする歌です。その選択によっては、素敵なお嬢さんに帽子を拾ってもらったり、水を撒いている所に差し掛かって濡れちゃったりする。何とも可愛らしい歌です。ところで、あの歌の安心感はどこから来るのだろうかと考えました。
それはきっと、あの歌の中の又吉さんがどっちの選択をしたとしても、一日が終わって、同じ部屋に帰り、同じパジャマを着て、ゆっくり眠りに着いている姿が想像出来るからなのだと思います。
 あれは、同じ現実にたどり着く安心感、という歌なのですね。
 『どっちにしよう?』
 『今日の選択は、私をどこに連れて行く?』