オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

サザエさん家は広すぎるのか?

今週のお題「引っ越し」

もうこの街にも来ないだろう

そんな最後の思い出に

見知らぬ街をただ歩く

ふっと見上げたその先に♪

ご存じ、Eテレ0655のさらばシリーズのワンフレーズです。と言われてもなんのことやら?という方の為に。0655は名前のとおり、朝6時55分から5分間のEテレの番組です。そこで色々な歌が流れるのですが、その完成度がどれもこれも素晴らしい。その中に、さらばシリーズとされる昭和歌謡風の曲があるのです。

 というのはさておき、そう、引っ越しをするという事は、最後に、もうこの街にも来ないだろう。というロスプリモスの昭和なメロディーが頭の中に流れて来るという事なのです(違います)。まるでクリスマスになると、どこからともなくクリスマスソングが聞こえる気がするみたいに。(いやだから…以下同文)

 年月が経ち、懐かしい街を訪れる時、かつてと変わらない場所に郵便ポストが立っている事にほっとしたりする。そして、毎日歩いた道沿いにあった酒屋さんは、ああコンビニに変わってしまったんだと勝手に寂しくなる。懐かしい街を歩くという事は、あの頃のあの人に会える気がして苦しくなる事でもあるのです。思い出を抱きしめるというのは、こういう事を言うのだと思い知る。

 ところで、10歳まで暮らしていた街を20年以上経ってから訪れるというのは、感傷というより衝撃です。住んでいた平家の住宅が二階建てに変わっていたのはいいとして、家の前の道路は、あんなに広くて遊び放題だったたはずなのに、大人の目で見ると、車がすれ違うのも難しい程の細い路地。子供達で溢れかえっていた駄菓子屋さんは、通りすがりに見落す位のちっぽけな店舗。子供の目線では、世界はとても広かったのですね。そういえば、テレビで見るサザエさん家は妙に広い。昔はあんな風だったのかと思っていましたが、子供目線ではあれくらいが普通なのかも、と思い直しました。

大人になるにつれ、なぜかどんどん手狭になっていく世界。ついには、あの広大なロシアでさえ、まだ狭いと感じる程まで、人間の自我は肥大できるものなのかと恐ろしく思います。時には、子供の目線を思い出して、世界の広さを堪能しておかないと。