オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

利き手と女性差別

女は家に居て子供を育てるのが仕事。働いている女は独身を通す事になる可能性が高い。結婚と子育てと仕事を全部手に入れるのは贅沢過ぎる願望だ、というのが普通だったのよ。昔はそうだったのよ。それで先行世代のK先生は結婚されずに仕事に邁進されました。次の世代のM先生は結婚されて、でもアメリカに留学したいと言ったら離婚してから行けと言われたそうです。私の場合は、夫が留学についてきてくれました。でも子育てはやっぱり大変で、服を脱ぎ着させる時間を短縮させたくて、かぶる服ばっかり着せてたから、うちの子は他の子よりボタンを閉めるのがずいぶん下手だったんですよ。

 一人の女性医師が、ある講演会で語った事です。その時会場には、和やかな笑いがこぼれ、時代の移り変わりを各々がじんわりと感じた瞬間でした。その講演会でさえ、既に二十年前くらいの出来事です。これからはもっと男女の区別なく仕事をして子供を育てる時代が来るのか。それはそれで男も女も大変そうだけど、生きていく大変さという点からはどの時代も結局は同じかなあ。とぼんやり考えたのを覚えています。

 あの講演会から二十年、ジェンダーギャップは縮まらないし、これから良くなるという期待も持てない時代。女性が強くなれなかったのか、或いは男性が女性の権利を奪い続けているのか?

 ところで、私の周囲では、手際よく、かつ機嫌よく仕事をこなすのは大抵が女性です。言ったことの8割出来たら良い方の、ボンクラ君は大抵が男性。もちろん、自分がやりたい仕事以外は手を抜くあざとい女子とか、ボンクラだと思っていたら、ものすごい勢いで仕上げてくる藤井聡太くんみたいな男性もいますよ。つまり、そこで男女差別しても良い事がない。なのに、どうしてこうなった?と思う訳なのです。

 それを女性差別というのなら、という男性を思い浮かべてみました。ちょっと怒りっぽい男性医師。女性の看護師さんとかには偉そうにするけど、男性の技師さんとかには以外と普通な態度。彼がある日、「女医さんと結婚する医者の気持ちがわからんわー。だって気が強いだろう。」と発言しました。そう、彼は自分より優秀だったりする女性が怖いのです。で、恐れの裏返しで格下の女性にキツくあたるのでした。

 差別をする側の人は、結局は怖くて腕をぶんぶん振り回して泣きじゃくっている様なものなのかも知れません。そういえば、TVに出てくる様な有名な差別主義者のあの人達も、まあよく喋りますねペラペラと。泣きじゃくっていると見ると腑に落ちる様なレベルの喋り方です。

 ところで、人に利き手がある理由は、利き手を作る事で脳と体の負担を軽くする事だそう。初めから優先順位を作っておく事で咄嗟の時にどちらで対応するか考えなくてもすむという事らしい。けれど、右利きの人の右手は左手の方が弱いから左手を攻撃したり差別したりなんて、もちろんしない。身体はそういう事が出来るのに、集団になると出来ないって、つくづく我々はバカですね。

 右手さんと左手ちゃんの関係から教訓を読み取って、暴走する右手くんを嗜める左手ちゃんとして、私は明日も微力で頑張る事にします。

私、失敗するかもしれないけど負けませんので。