オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

ディストピアの効能

特別お題「わたしの推し


ディストピアの物語たち

反ワクチンとか、諸々の誹謗中傷とか。有名人でなくても、SNSなどで何かしらの攻撃を受けた人は多いと思う。

自分は加害者にはならない。と思ってはいるが、時々、本当に大丈夫なんだろうかと薄ら寒くなる。彼らのあの攻撃性は、何かを信じ過ぎたり疑い過ぎたりしてしまっている人の、不安の表出としての攻撃性だと思うから。そういう意味では明日は我が身だ。信じ過ぎず、疑い過ぎず、この現実世界を生き抜くには一体どうすれば?

 何かを信じ過ぎてしまった人を変えるのは既にとても難しい。オウム真理教の幹部が高学歴のエリートだった事からも、どれほど理性や科学的な説得が困難なのかが解る。

 何を信じればいいのか分からない混沌の時代には、文学の力が必要だ。と誰かが言っていた。何を言っているんだ?文学なんて私のような活字中毒患者の、現実逃避の手段にしかならないでしょう。と思っていた。

しかーし、現実逃避の妄想世界。それこそがキーワードなのだ。文学の力を借りて妄想の世界を束の間生きるのは、多層的でタフな人になるための、人格の筋トレとなる。

負荷をかけた筋トレは強い筋肉を育てる。ディストピア物語は、おとぎ話に比べると、かなり強い負荷だ。その分、物語を通り抜けた後には、少し心が強く、複雑な人格になっている。ほんの僅かの変化だから本人も気がつかない位かもしれない。だから何度も、色々なディストピアの物語を通る事をお勧めする。何かを信じ過ぎてしまった後の場合には、さらに大量の物語が必要となる。大丈夫。世の中に物語は潤沢にある。

 ディストピアへようこそ。活字が苦手なら、映画でどうぞ。


侍女の物語早川書房

女性から自由や人権が奪われた世界を描くディストピア小説

ジューンはフレッドという政府の幹部の家に侍女として派遣され、新しい名前を与えられる。それはオブフレッド(Offred)フレッドの物・所有物(Of-Fred)と言う意味。

ディストピアなのだけれど、街や建物、家具の細かな描写がうっとりするほど美しい。


ドントルックアップ Netflix映画

ディカプリオ様が地味な天文学者として、彗星が衝突するという地球の危機を訴えていくのだが、イケメン学者として人気が出てしまい、テレビコマーシャルに出たりしてしまう。アメリカ大統領は地球の危機を選挙に利用しようとし、携帯電話会社のCEOは彗星をお金儲けに利用しようとしたり。いやいや、地球の危機なんですが…。超大物俳優が大真面目に馬鹿を演じているのが凄い。


番外編

邯鄲の夢 唐の故事のひとつ

人生の目標が定まらなかった青年が自分探しの旅に出るが、うたた寝の夢の中で人生の栄枯盛衰を全て経験し、そのまま故郷に帰っていく。

妄想や夢の実力、ここに極まれり。