オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

平和で小さな公園へ

今週のお題「好きな公園」


犬を飼っていた頃よく行った、とある公園。犬のくせに散歩が嫌いで、すぐに帰りたがる変な癖のあるお嬢さん犬でした。

彼女が、てくてく、一心不乱に歩く。背中の毛並みが、さわさわと、お尻の毛並みはふりふりと。

その様子があまりにも愛らしくて、いつまでも見つめてしまう。

彼女の背中越しに、公園の乾いた地面が見える。桜の花びらと、落ちた花芯が土にまみれて、ざらりと、春の風に吹かれた。春の風は冷たいけれど、冬の風とは違って、密度が薄くて気持ちが緩む。

毛皮の背中をじっと見つめていると、彼女は振り返る。

つぶらな瞳を精一杯ぱちくりして、少し口を開けて、どうかしたの?と言わんばかり。

そうね。そろそろ帰ってごはんにしましょうか。

YES、そうこなくちゃ。といっているかの様に、ふいっと向きを変えて、いそいそと帰路に着く柴犬のお嬢さん。

桜が散った公園にはサツキが咲き始め、遠くから子供の笑い声が聞こえていた。何でもない、平和で小さな公園。

 柴犬のお嬢さんは、いつしかその艶やかな毛並みから潤いが落ちて、つぶらな瞳は白内障になり、天寿を全うして姿を消した。

あの公園は今日も変わらず、乾いた地面と、桜の木々が、風にそよいでいるのだろうか?

行ってみましょう。平和で小さな公園に。