オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

夏のいいところ

今週のお題「夏物出し」
 夏は夜。より朝がいい。熱気と湿気が盛り上がってくる前の、未だ空が透明な青色の頃。人の気配のない通りに咲く朝顔も涼しげでよい。太陽が高くなり、じわりじわりと刺す日差しの元では、向日葵までも、ぐったりしてしまう。夏は、夜になっても、都会ではアスファルトがいつまでもいつまでも熱くて、ただひたすら辛い。
『家の作りやうは夏をむねとすべし 冬はいかなる所にも住まる』と、徒然草にはありますが、今の日本の夏は、暑きころわろき住まいは、堪え難き事なり、なんて言ってるのが呑気に思える程の酷暑なのですよ、兼好せんせい。
 ところで夏になると、冬の寒さが分からなくなるし、冬になると、暑いってどういう事だったのか思い出せなくなる。真夏に、ふと、しまい忘れたセーターが出てくると、よくもこんな暑苦しいものをと忌避したくなるし、冬に夏物のシャツを手に取ると、薄っぺらくて頼りなく思う。つまり、夏に冬の悪口を言うべきではないし、冬に夏の暑さに恋焦がれてもいけないと思う。
 もしかすると、吉田兼好徒然草のこの部分を書いたのが夏だったりして。それだから、夏の暑さがより辛く思えたのでしょうか。雪降る冬に書いていたら別の文章になっていた可能性もあるとかないとか。それはないか。
 ところで今は初夏。夏に恋焦がれても許されそうなので、夏のいいところを思い起こしてみました。暑い日の夕暮れの生ビール、実は全然涼しくないけど涼しげに見える浴衣、人混みと熱気でじっとり汗ばむ肌が不快な花火大会。あれ、いいところじゃないな。
結局、日本の夏は、クーラーの夏。エアコンさま様です。そのうちエアコンに感謝する祝日とかできたり、しませんね。