オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

3月は子羊のように

春は淋しい。

 3月の終わりに、定年退職される方が挨拶回りに来て下さいました。毎年の事で、いつも何方かが移動や退職されるのでよくある春の風物詩です。

そして今年も。

 来られたのは、一見すると強面で、声が大きくて、煙草を止める気がなくて高血圧で、自称小心者の、あの人。サバンナでも上野動物園でもなく、天王寺動物園にいるライオンのようだった人。そして、本当に偉い人は偉ぶらない、本当に聡明な人は他人を見下したりしない、という私の炯眼を裏付ける様な素敵な、立派な公務員でした。

 もちろん私の数百倍の重さで、定年まで勤め上げた職場に思い入れや懐かしさを感じているはず。心は寂寥で満ちている筈なのに。

「お世話になりました。」

と言って部屋の出口を出られた後に、つい、と振り返り、頭を上げた私達を見渡して、

「では、また」

と言って、ガニ股で両手を広げたポーズを一瞬取って、おどけて見せた、笑顔のおじさんが一人。

寂しそうにしている私達を慮る気持ちと、自身の寂しさを振り切る様な息遣いが入り混じった、持ち重りのする可憐な笑顔を残して、去って行きました。

ありがとうございました。いつか、また。

 

春は明るい。

今日は、庁舎の桜は満開です。