オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

初めての試験

今週のお題「試験の思い出」


ある日、小学校低学年の男の子が、

おれ、一生に一回でいいから百点満点取ってみたい。と言った。

その場にいた大人全員が、一回でいいの?これからどれだけ試験受けないかんと思ってるの?

と和やかに笑った。大人達は自分達の学生時代を思いだし、それぞれの人生の中で受けてきた試験、合格不合格での悲喜こもごもを思い出した。そして、でももう一回やれと言われたら絶対嫌だな。という感想に全員が頷いた。

 そんな彼はいま、高校入試を前に頑張って勉強しているらしい。百点満点は取れるのだろうか?

 私は小学生の時、九州の田舎から都会に引っ越す事になった。都会の学校に馴染めないでいる頃、なぜか学習塾の入塾試験を受ける事になった。そんな試験をどうして受ける事になったのか理由は覚えていないが、どうせ無料の試験だったからとかそんな理由だと思う。入塾試験に合格したのは覚えているが、その後その塾には行かなかったから。

とにかく私にとって、それが人生初のまともな試験だったのだ。だから、とにかく作法が分からなくて固まってしまっていた。試験監督の先生が何を言っているのかさっぱりわからないのだ。とにかく固まってしまっている私の斜め前に、同じ小学校の男の子がいた。というか私は気付いていなかったのだが。彼は私の様子を見るに見かねたのだろう。すーっと手を伸ばして私の筆箱から鉛筆と消しゴムを取り出し、筆箱はカバンにしまえと教えてくれた。その男の子は、クラスでは目立たないし暗い子という印象の子だった。そんな彼がとても落ち着いていて頼もしく見えた。

が、どちらかというとガキ大将キャラだった私は、そんな暗い子に手助された事が恥ずかしいやら情けないやらで、まともにありがとうが言えなかった。後日、学校で会った時も、言えなかった。

 彼は今どうしているのだろう?

あの時はありがとう。

40年も経ってしまったけど。言いたいな。