オブネココラム

ほそぼそ産業医 その他MD.PhD.。ご放念下さい。

追悼 小田嶋隆先生

 小田嶋隆さんが鬼籍に入ってしまわれた。
昨日、センセイの書いた小説を読み始めた所でした。
 小田嶋センセイは、現代社会を鋭く批評、とか言われがちだけれど、やはり鋭さはどうしたって、鋭い刃を握るその人自身が傷つかないではいられないのか、センセイの著作は、年を追うごとにその痛々しさが募ってきていた様に思います。批判を先に予測しておいて切り返しておく、その言い回しから伝わる悲鳴に似た感触が、なんとも辛かった。読者の私達はただ、小田嶋センセイが、その深遠な見識を思う存分に振り回すさまを、刀の演舞を鑑賞する様に、うっとりと読んでいたかっただけなのに。だから、小田嶋センセイ、もっとのびのびと言いたい事を言って下さい。と、伝わるはずもない想いを、熱心な読者として抱えていたら、なんと、小説を書いたというではないですか。これは、想いが伝わったのか、と、小躍りして読み始めました。そしてそう、これですよ。事実のみを書くとか、変な気負いのない小田嶋センセイの物語が、しなやかにその羽を広げる。面白くない訳がない。
と思っていましたが、遺作になってしまったのかと思うと、しばらくは、センセイの不在が沁みてしまいそうで続きが読めそうもないです。
読み終わった時から、小田嶋センセイが言ってくださっていた様な事を、誰かが言い続けないといけなくて、それはあなた自身だよ、と説教されそうで怖いから。もちろん、小田嶋センセイの様な発信力や影響力を持つというのではなく、ひとりの大人のオジサンとして物を考え、社会と関わる事、その背中を見せて生きる事。
重たいですよ、センセイ。もうちょっと子供でいさせて欲しかったです。